院試 -Graduate school examination-

 先日、他大の大学院を受験したのでその経験で感じたことをまとめようと思います。外部受験を考え始めた方の参考になれば幸いです。全く何も知らない人が読んでも分かってもらえる事を意識して書いたので文章量が少し多いです。部屋で寝っ転がってポテチを摘みながら読みましょう。
    一応私がどんな人間なのかという事で成績を紹介しておきます。現在学部では私立の理系の単科大学に所属しています。不遜な言い方になりますが偏差値でいうと日東駒専より上です(こう言うとほぼ限られてくると思いますが。あの大学か…あの大学ですね)。偏差値50無い高校から一般入試で今の大学に入学できたものの、学部3年が終わる際には平均GPA1.50以下という体たらくを晒していました。しかしこれでもかなり上がった方です。ちょっと良い視力くらいです。時には半期のGPAが1.00を下まわってしまい、学校から警告の手紙すら来たことがあります。最終的な学科順位は下から2番目でした(笑)それでも毎回スレスレで学年を上がることができました。と、こんな風に私自身特別普段から勉強していたわけではありません。大学自体もスレスレで合格したので飲み込みも絶対遅い方です。実際大学で生活していてそう感じることがあります。
  外部受験をする人はたまたま自分の学科では自分ひとりだけだったので何の情報も入ってきませんでした。大学受験とは訳が違い、別の大学の院を学校側が紹介するはずがありません。なのでネットや自分の足で情報を全て集めました。
 私は航空宇宙工学専攻が第一志望だったので主にそれらが中心のまとめになります。
 これは外部入試を考えている人向けの記事になります。飛び級の方、社会人の方にはあてはまらない可能性があります。以下の記事は主に自分が経験して感じた事を元にしているので主観が入っています。またすべての大学に共通するとは言い切れないのであくまでも参考にとどめてください。
 この文章はきっちり言葉一つ一つを意識して書いていません。メモ感覚で書いたので、文章の表現や分かりにくい個所があるかもしれませんがご了承ください。
最後の追記以外は全て試験が終わった後の(まだ結果が出ていない)3日間に書きました。

 

 

〉大学院に行く理由
 普通に考えて人によって違うはずです。例えば…
・自分の研究したい内容が自分の大学で研究されておらず、大学院に行って研究したい
・就職に失敗したorまだ働きたくない
学歴ロンダリング
・なんとなくまだ勉強・研究してみたい
・金額面の問題
・研究とはなんたるかを知るため
と、理由は十人十色、千差万別。
    私の大学ではそもそも興味のあった航空宇宙系の研究をしている研究室が有りませんでした(ものすごく探せば一つくらいあったかもしれないですが)。航空宇宙系と言えば理系では人気が有る筈にも関わらず何故か旧帝大明治大学日本大学など少数の大学でしか研究されていない。と,なると自然と進学先が旧帝大あたりとなってしまいます。

   航空宇宙の分野に興味を持ったのは中学生の頃でした。しかし良く漫画や映画の様にそこから書物を読み漁り、自分で数式を立てたり、何かコンテストに出たり…なんて事は微塵も有りませんでした。漠然とした興味だけでした。なので細かくどんな研究があるのか知らなかったので各大学のサイトなどを拝見して自分が興味を持った研究室にいこうと思いました。
   世間一般としては学歴ロンダリング(学部入試で失敗して難度が下がる院試で最終学歴を取りに行くことだっけ?)が悪いイメージが強いと思います。しかし本当に悪い事でしょうか?最近は『学歴は関係ない』とか『勉強だけ出来てもしょうがない』なんて意見もたまに耳にしますが私は半分賛成、半分反対です(どっちやねん)。
    私はまだアルバイトしかしたこともないし、父の様に会社で働いたこともないですが『学歴』はやっぱり就職に関係あるしある程度大切だと思います。だって面接官はあなたがどこの誰で何を頑張ってきた人間なのか一切知りません。それを主張するのは実際の面接以外にたった一枚の『履歴書』しかありません(ネットで回答することもありますが)。そこには自分の経歴しか書けませんよね?だからその最終学歴は自分が『このくらい頑張ってきましたよ!頑張れますよ』と主張できるアピールポイントの一つになると思うからです。もちろん学部入試は勉強時間が多い人順に受かるものでもないですが、一つの指標にはなるはずです。
 また、勉強だけ出来てもしょうがないと私も心からそう思います。勉強はできるがコミュニケーションを取れない、報・連・相ができないではどうしようもありません。しかし勉強も何もできない人よりは100倍マシなはずです。それに祖父や父にも「学歴は死んでも付いて回ってくるから勉強はしておいたほうがいい」と耳にタコができるほど聞いていました。死ぬ「まで」ではなく死ん「でも」って所が怖かったですね。
 以上偉そうに意見を述べましたが、結論は『理由なんてなんでも良い』ということです。その理由に良いも悪いも正解も不正解もないので自分の思うように決めたらいいと私は思います。なんか小論文みたいになっちゃったけど(笑)。因みに私の大学院に行く理由は上で挙げた全てです。
 上で挙げた金額面の話ですが、皆さんご存知だと思いますが私立の理系は年間160万円くらいなのに対して国立は60万円くらいと3倍の開きがあります。これはでかいです。私立の理系で4年間過ごしたら計650万円、国立の理系では250万円ということになります。つまり学部卒で就職するのであれば400万円分の借金をしているに等しいです。しかも大学院まで行けば差がより広がります。少なくとも同じくらい頭のよい国立大学ならそちらに行った方が好いですよね。もちろんやりたい内容があるか、就職率はどうなのか、何を将来したいのかによって違ってくるとは思いますが。
    私立の人が私立の大学院を目指したり、国立の人が私立の大学院に行くことも十分考えられるので、今言った金銭面のことは私立の人が国立の大学に行く場合に限られますね。
    最後の理由です。多くの大学では4年生つまりB4で人生で「研究」と言うものに初めて触れるはずです。私は学部3年までは1年あれば研究がかなり進み、論文一本くらいかけると本気でそう思っていました。実際4年になってみて感じますがこんな事はほぼ不可能です。論文を読んで非常に読みやすく簡潔に纏まっているのは、書き手の研究者が読者に分かりやすく読んでもらうことを念頭に書いています。なので実際にその結論を導き出すためにはそこに書かれていないことを山の様に行なっているはずです。その行った中で最も良かったものだけを論文では紹介しています。その全てを殆ど何も知らない様な学部生がやろうとしても不可能です。実験器具の使い方、プログラムの組み方、解析方法、実験の原理、関連した論文をいくつも読み込むなど莫大な作業が待っています。問題が一つ出ればまた一つと別の問題が出現します。一個の疑問を解決するには1日で足りないこともザラです。一ヶ月や二ヶ月程度ではたとえ週5で研究室に来ていてもなかなか進まないと思います。これがだんだんと年季が立つとスピードが身について来てやっとこさ研究が一人で、先生と方向性を話し合いながら進められるという領域に到達します。この境地まで行くにはやっぱり2、3年かかるはずです。そこまでしてやっと「研究ってこうやるのか」と理解できるはずです。私は学部4年で容量も悪いのでこんな境地までは至ってません。ただ、身につけたいので大学院を志望したという理由もあります。

 

 

 

〉大学院に行く方法
      大学院に行く方法は『推薦入試』か『一般入試』のほぼどちらかに絞られます。どちらも7月から8月末ごろに行われる場合が多いと思います。推薦入試の場合学校の成績が重視されます。すなわちGPAが相当に高い必要があります。3.00以上などという具体的な数値はどこの大学でも募集要項に載せていないと思います。これは自分で判断して推薦入試で出願してから、大学側で『この人は良いけど、この人はダメ』と判断して、自分が推薦で受験できるのかの結果が自宅に送られるはずです。推薦で受験できる人は希望する分野の知識を問われる『口頭試問』と志望動機などを聞かれる『面接』でその大学に合格できるか決まるはずです。推薦で失敗してしまった人や推薦入試で受けられなかった人はそのまま不合格になるのではなく、他の多くの人と同じく『一般入試』で受験するしかありません。
  一般入試は筆記と面接で決まる大学が多いです(筆記ではなくプレゼンのところもあるらしいです)。面接は一人2、3分と短いですが、筆記試験の出題範囲が大学によって全く違います。まずどこの大学でも専門科目を解くことは共通していると思います。機械系の専門科目には”4力”と呼ばれる機械の力学、材料力学、流体力学、熱力学と制御工学の5つが少なくとも選択肢として入っていると思います。そのなかで解く必要がある題問の数は大学によって違います。
    専門科目以外に数学の知識を問われる大学も結構あります。複素関数論、微積分、常微分方程式線形代数、ベクトル解析、フーリエ級数・変換、ラプラス変換偏微分方程式が主に挙げられます。これらは受験する大学で決まっているので早めに調べて勉強に取り掛かり、合格するには6割程度取る必要があります。東大や東工だと5.5割以上くらいらしいです。
    最期に英語です。英語はその学校独自の試験が課されるところもあると思いますが、基本的にTOEICやTOFLEの点数を要求されるケースが多いと思います。しかもこの提出するテストですが直近過去2年以内に受験したものしか使えない、TOEICは受け付けないなど条件があるので確認しましょう。点数に関してですがTOEIC600点が平均点くらいだと思います。私は3年の6月に受験して600点ちょうどだったのでこのスコアを提出しました。ただ私は2人の先輩に聞きましたが800点、900点で受験したと仰っていたので、そういうずば抜けて高い人もいます。
    上で挙げたように推薦入試か一般入試が主流です。また、一部の噂として研究室の先生同士の口利きで合格するなどがありますが、これは無いと思った方がいいです。少なくとも私は実際にこの方法で合格した人は知りません。
 また最近知ったのですが、その研究室独自の試験があるところもあるらしいです。

 

 

〉勉強をいつ始めるのか
 人によって全く違います。1年半の人だったり1か月の人だったりまちまちです。自分は2年の春休みに少しずつ意識して勉強を始めました。今思うと早すぎました。
    私の意見ですが学部入試の様に毎日8時間や15時間以上勉強する必要は全くないと思います。逆に中だるみします。ただ4年になってから始めると危ないと思います。授業は基本的に無くなると思いますが、今度は研究する必要が出てきます。研究室の先生が優しかったり、ゼミの頻度が月1など緩ければ受験勉強に割く時間はかなり確保できると思います。しかし先生が厳しい、ゼミが週1、もしくは複数回あり発表しなくてはならないなどの必要がある研究室に配属された場合、4年から始めた場合間に合わない可能性が大いにあります。私の研究室は後者のパターンでしたのでかなりキツかったです。ただ元々ある程度勉強を始めていたこともあり、最悪の状況は免(まぬが)れました。普通に考えて研究室の他の人と同じ時間研究に時間を費やすと睡眠時間まで削って勉強しなくてはなりません。なので研究の方はほどほどに抑えて受験勉強に前期は注力するのが良いと思います(あくまでも前期は)。私の研究は先輩の引継ぎで、ウェイトが比較的軽めのものを選んだので若干楽でした。
 そういえば東北大学の先輩の中には6月くらいから勉強初めて8月頭にはやることが無くなったという方もいました。

 

 

〉受験する大学の数
 これは日程さえ被っていなければ何校でも受験できます。ただ難易度が高い大学ほど受験にかかる日数が多いので現実的には多くても3、4校くらいだと思います。大学ごと異なる可能性がある試験科目の勉強や面接で言うことを整理する必要が出てくるので多くなるほど大変です。いずれにしても多くの人は自分の大学の院を受験すると思います。
    後の方にも書きましたが、私は志望校と自分の大学の入試の日程が被っていたので他大を受験するかどうかを相当悩みました。自分の大学の大学院なら他大を受験するよりも有利です。その自分の大学の院を受験しないということは滑り止めも何も無いに等しいと思います。

 

 

〉大学院に行く人の割合
 当然ですが大学によって全然違います。偏差値が高い大学になればなるほど大学院進学率が高くなる傾向があると思います。昔に比べると年々院に行く人は増えているそうです。最終的な生涯賃金も院卒の人の方が一千万円くらい高くなるらしいです。たしか国が発表していたと思います。

 

 

1、大学院のとっかかり
・まず過去問を見る
 大学院に行きたいな~、ちょっと興味あるな~と思っているそこのあなた。とりあえず過去問を見てみましょう。大体の大学は3年分の過去問題を公開してくれています(メールで連絡を取らないと過去問を頂けない大学もありますが)。そこで大体のボリュームを感じましょう。大学院入試の勉強の主軸は過去問です。参考書ではありません。
 参考書ではその分野すべてを細かく網羅していますが、大学院入試では明らかにここは出るけど、ここはほぼ出ていないなどの傾向がはっきりあります。私は過去問を解くために参考書を使っていくというスタイルをしていました。話を聞く限り他の人達もこの方法をする人が多い様に感じます。

・研究室を探す
 例えば、流体の研究がしたい!だけではとっかかりとしては良いと思いますが、決めることが出来ません。同じ流体の分野でも人間の呼吸の際の空気の出入りの分析、小型推進機の開発、双子渦やカルマン渦の構造物に対する影響や、ロケット発射時の騒音抑制、ミクロ・マイクロといった微視的な観点からアプローチする研究など様々です。自分の研究したいものがハッキリと『これ!』と決まっている人はごく少数だと思います。いくつかの大学の研究室でどういった内容の研究をしているのかを調べたり、説明会に参加したりして自分で情報を集めて目星をつける必要があります。当たり前かもしれませんが。
    その作業に加えて受験科目も調べましょう.機械系であれば東大や京大の試験科目が一番凶悪で数学に加えて専門の4力全て必要だった気がします。しかも一問一問の難度も少し上です。残りの勉強時間、そこで研究している内容、試験科目を天秤に掛けて研究室は選びましょう。1番の理想はやりたい事が出来るかどうかのみで決めるのが良いと思いますが、受からないければ意味がないのでどうしても試験科目なども考慮すべきだと思います。

・興味がある研究室の先生にアポイントを取る
 行きたいと思った研究室、興味ある研究室に目星を付けたらその先生にメールでアポイントを取りましょう。絶対に直接伺って『こんちわ~。-先生いますか?』というのは止めましょう。大学によっては説明会を3、4月頃(大学によって全然違う)に行って、その後、研究室に行き、先生と会話する機会を設けていただけるようなところもあります。私の感覚としてはそのような学校は少ないと思います。私は実際に先生に個人的にアポイントを取り、見学させていただきました。5月中のことです。大体先生の研究室のホームページに連絡先のメールアドレスが記載されていることが多いです。そもそも研究室のサイトが存在せず、先生の顔写真も無く、ただ単に研究なさっている分野と連絡先しか記載されていないこともあります。
 因みに私はB4で研究しているテーマは『熱力』だったのですが、元々『流体』や『航空宇宙』の分野に興味がありました。なので大学院では全く別のことを研究することになります。
 実際に先生とお会いすることでその先生や研究室の雰囲気、ゼミの頻度や実験設備、入試の際の定員の上限、研究テーマは自分で決めるのか先生が考えてくださった中で自分たちが選ぶのか、など分かると思います。先生と話した後は研究室の学生を紹介してくださったりすることもあります。その時は『アルバイトはできますか?』『海外で学会に参加する機会とかはあるんですか?』『面接で何を聞かれましたか?』『どんな参考書使ってましたか?』『TOEICはどのくらいの点数の人が多いんですか?』『どんな研究テーマがあるんですか?』『ゼミ合宿はどこに行くのか?』などの基本的な質問から『先生はふんだん優しいんですか?』など本人には聞きづらい質問までぶつけてみましょう。きっと喜んで教えてくださるはずです。
   先輩方の話や自分で会ったりする中で、先生が物凄くあなたと合わなければ別の研究室にした方がいいかもしれません(一回あっただけじゃ見極めるのは難しいですが)。性格がよっぽど違うと2年間やっていくことはつらいと思います。私は東北大学で2つ、他の大学で1つの研究室を見学させていただきましたがどの研究室の先生もとてもにこやかで昼食まで奢っていただいたこともありました。
    過去問に関しても言及しない先生とする先生の2パターンの方がいます。大体の先生は言及しないですが、してくれる先生は『過去問大丈夫?あげようか?』など提案してくださる場合もあります。基本的には自分から動く必要があることを忘れずに!あと、別に菓子折りなどはいりません。服装も私服でもスーツでもどちらでもいいです(指定が無ければ)。
   最後に研究室訪問させていただいたその日に御礼のメールを送るのも忘れずに!

 

・過去問を入手する
 これがまぁ大切です。これが無いとキツイです。
 上でも書きましたが基本的にどこの大学でも直近3年分しか掲載してくれていません。少なくとも10年分は欲しいです。10年分こなすと傾向がハッキリ分かるようになります。こればっかりはネットのどこ捜しても載ってないと思います。他の7年分は自分の足で探すしかありません。私は去年のオープンキャンパスで名前も知らない先輩と仲良くなり、その人から頂きました(あの時の先輩ありがとー!)。私は少しマイナーなケースですが他の人は研究室見学した際に先輩から頂くと思います。オープンキャンパスに行って過去問を頂く場合はどの先輩でも良いのではなく、自分の行きたい研究室、もしくはその分野の研究室の方である必要があります。極端な話、心理学系の研究室の人が機械系の過去問を持っている訳ありませんから。まあ、そんな鬼気迫っていくのではなく純粋にオープンキャンパスを楽しむ心も忘れずに!それとUSBも!!募集要項もあれば2部くらい頂いた方がいいです。
 あと過去問のファイルに入っている可能性が高いですが、先輩方が解いた『解答』も貰えたら貰いましょう。その先輩が解答を持っていなければもう一人別の先輩を見つけて貰うのが良いです。

 

 

2、参考書について
 結論から言うと参考書は特に難しいものは必要ないと思います。変に気構えて『俺は(私は)なんとしても合格したいから自分の大学で使っている教科書なんかでは話にならない。もっと東大で使っているようなレベルの参考書じゃないとだめだ!』と考えたそこのあなた。ちょっと立ち止まって過去問を見てみましょう。具体的な解き方は分からなくとも『これなら勉強すれば点数取れそう』と思うはずです。少なくとも頭の良くない私ですらそう思いました。学部入試の時、何も勉強していないのに過去問を見ても絶対にそうは思わなかったはずです。明らかに上がらなくてはいけない階段の数が少なくなっている、敷居が下がっていると言えます。もしくは理系として場数を踏んできたからその分事前に知識がついているからかもしれませんが。
 私の使った参考書はおそらくどこの大学の図書館でも置いてある有名な『マセマシリーズ』です。正直これと過去問しか数学に関しては使いませんでした。
 私は専門科目に『熱力学』と『流体力学』を選択しました。熱力学は覚えなくてはならない内容がそこそこありますが流体力学は覚える内容が少なく、慣れでどうにかなる部分は多分にあります。
熱力学に使用した参考書は『熱力学 事例でわかる考え方と使い方』と『JSMEシリーズ』です。最初の本は理論的にというよりも直感的に素人の全く何も知らない人でもとっつきやすい参考書でとても理解しやすいです。かと言って内容は薄っぺらいこともないです。しっかり閉じた系の第一法則から各サイクルの特徴まで網羅しています。ただしこの参考書では『熱力学の一般関係式』ががっつり抜け落ちています。ここは全微分という数学的な処理・考え方をガンガン用いる分野でかつ東北大学では超頻出の分野なのでここはJSMEで対応しました。しかしJSMEでは逆に細かすぎると思います(ただし熱力学の一般関係式の部分は全て把握、理解、証明できる容易になる必要あり)。就職して仕事で必要な知識を得たりするのには物凄く重宝する本だと思いますが東北大学の入試ではJSMEを全て理解する必要は全くないです。(最初の参考書は蒸気サイクルまでは絶対に理解しておく必要がある)。ただ最初の本では乗っていないサイクル、再生サイクルなどが載っており、同じ部分の説明でもより詳しく乗っています。最初の本で理解しにくければところどころJSMEの説明を参考にするべきだと思います。
流体力学は『JSMEシリーズ』と他の古い本を参考にしました。JSMEは問題数が少なすぎるので慣れるには他の参考書で問題の解き方に慣れる必要があると思います。いくら理論を理解しても、実際に使ってみないと分からない事もあるので問題を解いてみることが大切です(完全に主観)。覚える必要があるのは以下の項目
・連続の式
・ベルヌーイの式
・運動量保存則
・円管内流れ
・境界層
・ポテンシャル流れ
ナビエ・ストークス方程式
などです。これらを網羅さえすれば東北の流体は問題ないと思います。
    最期に有名な本で『機械系大学院』がありますが個人的にこれは必要ないと思います。ましてや全て理解する必要など皆無です。ただ普通に解く分には少し難易度が高めで良い勉強になります。もしすらすら解けるなら専門科目に関しては全く問題ないと思います。

 

 

3、勉強方法(自分の体験談なので人によっては『効率わるすぎ!』と感じるかもしれません)
 項目を作っておいて何ですが特に変わったことはないです。普通に勉強進めるだけです。過去問を見て解けそうなら解いてみる。もし解けなそうなら参考書で知識を身に着けてもう一度挑戦してみる。自分の答えと先輩の答えを照らし合わせる。一致していたらそれで良いですが、一致していなければあなたか先輩の回答のどっちかが間違えています。その時はその分野の先生を捕まえて直接質問しにいきましょう。その人の授業を受講しているとかは関係ありません。何としてでも聞いてください。間違ったまま進むと自分では正解だと思い込んでいる答えが実は全然違った、なんてことが出てくるかもしれないからです。これを本番でやったら受からないです。
 参考書を見ながらでも良いのである程度解けるようになったら自分だけの回答を作りましょう。10年分を一周やりきったときの回答を全て清書し、それをパソコンでスキャンして2週目の答えや先輩の答えと照らし合わせます。そうしていけば自分の答えの信ぴょう性も上がりますし、過去の自分の考え方などが分かるので役に立ちます。

 

 

4、面接(ここはあまりアテにならないです.理由は最後の追記に書いてあります)
 面接に関しては特に過去問などはないので心配でした。ただ、ネットの他の記事で少しまとめてくれていたり、研究室の先輩方から話をお聞きして対策をしました。自分の想定では20分くらい質問攻めに会うのかと思っていたら全くそんなことはありませんでした。先輩方の話から『2、3分で終わるよ』と聞いてとても驚きでした。でも確かに100以上受験しているのに一人20分もかけてたら2日くらいかかってしまうので、一人2、3分となってしまうと思います。
 面接で聞かれる質問ですが、大まかに募集要項に書いてある大学もあります。事前に私が想定していた内容としては以下の項目が挙げられます
・自分の研究について
・なぜこの大学、研究室を志望しているのか
・他の大学院を受験したか
・現在所属している研究室と志望している研究室の分野が違うが何故か
・合格して研究室に配属されたらどんな研究をしたいか
大体この5つの基本的な質問に対する答えを自分なりにまとめ、少し練習していました。実際に面接を受けてみてこれらの質問に対する答えが用意できていれば十分でした。
別の大学を受けた友人から聞きましたが、他の受験生が休憩時間中に話していた内容が聞こえたことがあったらしいです。その会話からすると面接が始まる際にアイスブレイクとして教授が『試験はどのくらいできた?』『結構遠かったでしょ』などを質問してくれて緊張を緩和してくれるとかないとか。残念なことに私の場合はされませんでした。
 ※先日、同じ研究室の旧帝の大学院を受験したことがある先輩に面接について『秒で終わりましたよ』と伝えたところ先輩が受験した時はかなり細かいところまで聞かれたと仰っていて驚かれました。なのでこの面接の部分の私の意見は役に立たないかもしれません。 しかし少なくとも上の項目で挙げた質問には答えられるようになっておくべきです。

最後の方の (追記)も呼んでください。順序の問題もあって最後に書きます。

 

 

5、ついに試験
 入試は3日に分けて行われました。
1日目:数学A(微積分、線形代数、ベクトル解析) & 数学B(常微分偏微分方程式フーリエ級数・変換、ラプラス変換)
2日目:専門科目
3日目:面接
こんな感じです。
8時45分ごろから入室開始だったので少し早く着きすぎた私は近くの花壇の縁に腰かけて最後の追い込みをしました。
入室が開始し、試験会場に着いたとき、椅子が後ろの机と一体型だったのでとても気になりました。時計は会場内にありました。
数学Aの試験は6割くらいの正答率だと思います。ベクトル解析は満点だと思いますが、線形代数は(3)、(4)の途中までで6割、微積分に関しては大目に見て5割くらいの出来だったと思います。
数学Bで完全にやらかしました。フーリエが全く分からない…想定していた最悪の問題でした。大目に見て1割。それにラプラス変換と同様に満点を取れる自信があった偏微分方程式が出てない!解答用紙が3枚しか配られなかった時点で嫌な予感がしましたが的中しました。ラプラス変換常微分方程式は例年通りの難度だったので8割くらい。全体で5割程度。
冷静に考えると『もうだめだ…』とまではいかないですが、あまりにフーリエが出来なかったこと、試験時間が20分くらい余ってしまった事。完全に想定外の出来事だったので試験時間の最後には何の為に1年も勉強したのか…と感じました。あまりに落ち込んでいたので気が付いたらホテルにいました。『もう明日はいかずにベッドでゆっくりしよう…』と本来の自分が出てきました。しかしとりあえず最後までやってみようと思い、専門科目の復習をゆっくり始めます。
2日目の専門科目。完全に自分の力が発揮出来ました。熱力、流体で計4題ですが満点の題問が1つと8割できたのが2つ、7割が1つで合計8割くらい解けたと思います。
    ここまでで筆記は6割くらい。ボーダーが6割だと思うのでほんとギリギリです。試験結果は9/9なのでまだ分かりませんが、やり切ったと言える頑張りはしたと思います。あとは待とう…

 


6、試験を終えた手応え
 わざわざ一つ章を作ってまで書くほどの内容ではないと思いますが,おそらくこの記事を読んでいただいている後輩達は興味があるのではないでしょうか。そう思って作りました。
 まとめると国立S大学と東北大学の2校受験しました。終えてみた手応えとしてはどちらも『絶対受かった!』と言い切れる感触は一切なかったです。S大の筆記試験は『勝負ができる点数は取った』,東北は『数学ではボーダー行ってないけど,専門科目がかなりできたからどうだろう…』てな感じでした。というように筆記試験の結果ならそこそこ取った自信はありましたが、上で書いた通り面接があっさりしすぎて『落ちた…』という感覚が拭えませんでした。
 学校の試験でも『あのテストで何故単位が取れたんだ…』とか自分の予想とは逆のいい方向に行くこともあれば、『何故あんなにできたのに単位が取れなかったんだ!』という時もありますよね?私がトラウマだったのは後者です。3年の前期に大学生活の中でも難しい部類の必修の授業がありました。その授業では熱力や流体も扱っていました。他の友人たちが分からない中,私は既に受験勉強をしていたので授業中の問題すら参考書を開かずに全て解けました。テスト自体もほぼ完答し,絶対単位取れたと確信していました。しかし結果は不合格でした。このちょっとした事件からトラウマになりました。自分では極めたつもりが実際にはとんちんかんな考え方しかできていないのではないか?と不安に駆られた時期もありました。
 とりあえず試験の終わった後の自分の感覚なんて全くあてになりません。試験が終わったのなら後は待つだけです。お酒飲んで、ごろごろして遊んで、プレステやって遊んで…って感じで試験をやり切れたこと自体をまずは喜びましょう。しばらくシャーペンは握らなくて良いと思います(笑)

 

 

7、もし全落ちした場合
 絶対にそうなりたくはないですが、絶対にそうならないという保証はありません。もしも全て不合格であった場合の選択肢は必ず以下のどれかに当てはまると思います。
 ・就職する
 ・後期の院試を受験する
 ・来年まで待つ
 ・とりあえずアジアの旅にでも出て自分探し
・全て諦める
 私の所属している大学では8月でも東証一部に上場している企業からの推薦が来ているので就職しようとすれば理系の人は今からでもできると思います。ただ4月から始めていたら空きがあった会社でも今は募集してませんよ、という所もあると思いますが。
 後期の受験ですがそもそも後期の受験がない大学もあると思います。第一志望の大学がダメで後期の受験が無い場合は別の大学の大学院に後期受験するか来年受験しなおすという道があります。来年まで待つ場合はあえて4年で休学して大学に所属したまま勉強やアルバイトをして期を待つか、研究室に研究員?という形式で残るか、大学を完全に卒業して受験するかなど道はいくつかあります。中でも完全に3月に卒業してから5か月くらいは学生ではなくただの大人になるので海外を旅しながら勉強を続けるというのも選択肢としてはあると思います(ただ自分が思いついただけ)。
   私は合否がまだ結果は出ていません。全てダメだったらどうするかは一切考えていません。もしダメだったらどうしようか…

 

 

9、最後に
 私は大学に入学する前から大学院に行く!と決めていました。しかしそれからずっと意識が変わらなかった訳ではありません。時が経つにつれて、友達が出来るにつれて、大学生活をするにつれて、3年に上がってからでも『皆と同じで就職でいいか』とか『この大学の大学院に素直に上がろうかな』などと思う時期もありました。上でも書きましたが受験勉強は3年の春休みから始めましたが毎日欠かさず勉強していたわけではありません。やったりやらなかったりと波はありました。それも何か一種の使命感に駆られて「受験勉強しなければ…」という意識は持って続けていました。周りは誰一人,少なくとも受験勉強なんてものしていませんでしたが別に辛くも何とも無かったです。高校時代も一人で3年間勉強し続けたのでかなり鍛えられました。
    大きな分かれ目は4年の3、4月のことでした。なんとずっと入学したかった東北大学と自分の大学の入試日程が被っていました。自分の大学の院なら落ちることはほぼ無いに等しい(感覚的な意見)ですが、もし東北を優先して落ちた場合本当に行き先が無くなってしまう。大袈裟に言うと人生が詰んでしまう可能性が出てくる。これがきっかけで悩み始めました。しかも自分が所属した研究室のB4の8人中4人は普段遊んだりする友達でした。その友人たちは内部進学で大学院に行くので私もそうしようかと迷いました。研究室の先生は学科で最も厳しい先生でしたが理不尽に厳しいわけでもなく、私たちが成長するのにはこうした方がいいという考えを持った先生でした。その先生も外部に行かず同じ研究室で進学することを進めてくれたので、私は外部受験を諦めて内部で進学しようとしました。しかし両親にそのことを伝えた所、自分の大学の大学院ではなく外部をチャレンジしてみろと言われました。普段話さない、仲もあまりよくない父からの言葉だったので心に重く伸し掛かります。
     この2週間くらいはいっちょ前に辛かったです。就活の友人とも『面接が厳しかった』、『毎日毎日説明会でめっちゃ疲れる』などと酒を飲みながら会話していました。みんな辛いけども頑張って進んでいるのに自分だけ迷いに迷い、立ち止まり続けている。このことに焦りと苛立ちを感じて、吸いもしないタバコをひと箱吸ったり辛さを紛らわせました。恥ずかしいですが夜の公園でビールを飲んで空を見上げたら涙が出たこともありました。
    ふと気づきましたが『どうすればいい?』ではなく自分に問うべきは『どうしたいのか?』です。それから自分がどうしたいのかで迷いましたが、あの高校3年の時に感じた『大学院に行きたい、航空宇宙の分野の研究がしたい』という気持ちがその時まだ完全に折れていませんでした。
     そこから『外部進学しよう』と腹は決まりました。再び勉強に本腰を入れてアポイントを取り、研究室訪問に行き始めました。
    以上、自分の体験談でした。下手な小説みたいになってしまいましたね。私は物事を重く受け止めすぎてしまう傾向があるのでこのように悩む時期もありましたが、普通なら院試はもっと気軽に受けられるものだと思います。
    結局言いたい事はどんな道にも正解も不正解もないので、きっとあなたが選んだ方向に道が出来るだけです。大学院進学に興味のある方は早めにどうしようか少しずつ考えるのが良いと思います。迷った挙句に就職するのも内部進学するのも外部進学するのも、どちらでもでも楽しいと思います。ぜひ自分の納得できる道を選びましょう。

 

またこの先の時代は主に文系の職が機械に取って変わられてきます。実際にそういうデータを国かどっかが出していました。そうなってくると理系の割合が増加してきます。それと同時に求められる能力も高くなるはずです。どうしても専門性を追求したり自分で考える能力を養おうとすると大学院を志望する人数が増加し、倍率が上昇してかつ試験が難しくなってくると思います(私の長期的な考え)。今の内に院へ行っておいた方が良いとも思います。

 


 一番上でも書きましたが学歴がすべてではなく、ただの一つの指標に過ぎません。しかし自分の努力が目に見えて結果として現れたこと、興味のある分野を研究出来ることが素直にうれしいです。最も一番嬉しいのは友人に報告したら『おめでとう!』と一緒に喜んでくれたことでした。これは本当に嬉しかった。本当に。

   今発表から一日経ちましたが、冷静になり学校の名前よりもその大学で何を考えて何を成すのかを考えるようになりました。いくら良い大学を出ても実力が伴っていなければならないと肝に銘じるようになりました。
 私は将来研究・開発の仕事に就きたいと考えています。しかしその現場で働いている人の意見を聞くとやはり厳しく大変らしいです。確かにやる気は十分あります。しかし自分に研究できる能力が身につくのか、そもそも研究というものが自分に向いているのかをこの先見極めたいと思います。やるからにはその分野で天下を取る気でやります。
    怖いことはここで満足して歩みを止めてしまうことです。自分がもっと実力を付けたいから,もっと面白い人・新しい人と話をしたいのでまた目標になるものを探していこうと思います。

 研究室の先生や個人的にお世話になった先生方にあいさつに行ったらよく褒めてくれました。研究室の先生には前期に研究をサボって勉強ばかりし,挙句の果てにその先生の授業すら落としてました。因みに研究室内で落としたのは私だけです。提出物も一切出さず、テスト勉強は当日の朝の2時間だけだったので当たり前ですね。
    後期から遅れを取り戻すべく頑張ります、と伝えたら受かったんだから大丈夫。気にするな、と言ってくれました。あと『君の学校の成績で受かるのは凄い,よっぽど勉強してなかったんだな(笑)』とも言われてしまいましたw。

 私は家の中で話す方ではなく、なかなか気恥ずかしくて本人には言いづらいのでこの場をかりて一言。毎日料理や洗濯そして家計を支えてくれた母,単身赴任で働いている父に御礼を言いたいです。いつか本人に言えれば良いのですが。

 最後のオチですが、4年の後期にもなって単位がいくつか足りないので授業とらないと卒業できないです(笑)無事卒業できるように頑張ります!

以上,私の大学院試験を通してどう思ったか,でした。終わり!